展示会の音響ミニPA実務【決定版】|ハウリング0で“ちゃんと届く”配置・SPL設計・EQ・SOP
映像が良くても、音が回る/届かない/うるさい…では体験が崩れます。本稿はミニPA(SP×2+小型ミキサー+ワイヤレス)を前提に、SPL設計(距離・騒音・必要音圧)→配置→EQ/ダイナミクス→dB運用→SOP→トラブル分岐まで数値と手順で落とし込みます。ブース規模別のプリセットと、見積注記も収録。
結論(TL;DR)
- SPL設計が起点:来場ノイズ+6〜10dBを目標(通路70dBAならSPで76〜80dBA)。
- 近接・顔向け・少音量:スピーカーは客に近く、演者から遠く、聴衆へ角度。点で当てる。
- ゲインは上流から:マイク→レシーバ→ミキサ→SPで正規化。CH -12〜-6dBFSを目安。
- EQは最小限:HPF 80–120Hz、2–4kHzを可聴性で微補正、ハウり周波数のみ狭Qでカット。
- ワイヤレスは事前スキャン+新品電池、被り時は即チャンネル切替。
1. SPL設計(必要音圧を数字で決める)
1-1. 目標SPLの決め方
- 来場ノイズ(通路)=N dBAを測る(昼ピーク時)。
- 目標SPL=N + 6〜10 dB(明瞭に聞かせる最小余裕)。
例:通路ノイズ70 dBA → 76〜80 dBAが目標。
1-2. スピーカー必要出力の概算
SPL(距離d) ≈ 感度(1W/1m) + 10log10(出力W) - 20log10(d[m]) + スピーカー数補正
- 二台同時駆動で+3 dB目安。
- 例:感度95dB/1W/1mのSPを2台、聴衆距離3m、目標78dBAなら…
78 ≈ 95 + 10log10(W) – 20log10(3) + 3 → 10log10(W) ≈ 78 – 95 + 9.54 – 3 ≈ -10.46 → W ≈ 0.09W(理論値)。
実務は損失/余裕含め10〜20W/台でも十分。“距離を詰める方が勝ち”。
※広域に大音量を飛ばすほどハウリング・苦情のリスク増。近接×少音量×指向性で解決。
2. スピーカー配置と角度(幾何で決める)
2-1. 原則
- 高さ:聴衆の耳より少し上(1.6〜1.8m)。床反射を避ける。
- 角度:客の顔へ向け、演者の背中側に置く(マイクとSPの主軸を外す)。
- 距離:近接でカバー。SPを前に出し、全体音量を抑える。
- 指向:広がり過ぎる箱なら内振りで漏れを減らす。
2-2. 目的別の推奨レイアウト
| 目的 | 配置 | 角度/距離 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 集客アナウンス | 入口寄りSP×2 | 通路へ斜め内振り、客まで2〜4m | 高域やや持ち上げ(2–4kHz) |
| 商品説明(近距離) | 説明位置のやや前にSP×2 | 演者とマイクはSP後方(背中側) | 近接で音量を下げハウリング抑制 |
| ミニセミナー | ステージ左右SP×2 | 客席へ外振り、最前列2〜3m | 録画/配信はライン分岐 |
通路にはみ出さない設置、高さ確保、スタンドの転倒対策(養生+重り)は安全項目として必ず実施。
3. マイク運用とゲインステージ(数値で“正規化”)
3-1. マイク選択/距離
- 単一指向(カーディオイド)を基本。口元10〜15cmを徹底。
- ハンド→司会に最適。ラベリア→両手使用に便利だがハウりやすく、位置と衣擦れに注意。
3-2. ゲインの基準値
- レシーバ:AF Peakが時々点く入力レベル(過大はNG)。
- ミキサCH:喋りピークで-12〜-6 dBFS(メーター基準)。
- メイン/パワー:SP側でクリップしない最大値に固定。
3-3. EQ/HPF(最小限で明瞭に)
- HPF:ハンド80–100Hz、ラベリア100–120Hz。
- 明瞭度:2–4kHzを+1〜3dB(状況次第)。
- ハウリング抑制:発生周波数のみ狭Q(Q=8〜12)で-3〜-6dB。広く削らない。
3-4. コンプレッサ/リミッタ(事故防止)
- Comp:Ratio 2:1〜3:1、Attack 10–20ms、Release 80–150ms、Thresholdは喋りピークより少し下。
- Limiter:クリップ-1 dB手前に設定(Attack 1–3ms/Release 50–100ms)。
- Ducker:司会優先(BGMを-6〜-12dB)。Thresholdは司会マイクの通常発声で確実に掛かる位置。
4. ワイヤレス運用(被り/電池/アンテナ)
- スキャン→ロック:会場入り後に自動/手動スキャン→チャンネル確定→ロック。
- 被り対応:隣接ブースと周波数重複を回避(先着が強い。現場調整)。
- 電池:本番前に新品。4h超なら途中交換スロットを入れる。
- アンテナ:レシーバは見通し、金属壁/LEDから距離を取る。
5. dB運用と測定(“うるさくないのに聞こえる”)
- 館内規定:主催のdB上限(時間帯指定)を事前確認。
- 測定:通路中央でスマホSPLでも可。平均/ピークを記録。
- 可聴性:2–4kHzを支点に、全体音量を下げて聞こえを稼ぐ。
6. 当日SOP(分刻みの手順)
- 通電順:レシーバ→ミキサ→SP。
- ゲイン合わせ:上流→下流で基準化(CH -12〜-6dBFS)。
- EQ/HPF:HPF設定→2–4kHz微調整。
- ハウリングテスト:歩きながら狭Qでピンポイント抑制。
- アナウンス運用:BGMにDucker。司会優先を確認。
- dB確認:通路で平均/ピークを測り、規定内に収める。
7. トラブル別 分岐フロー
7-1. ハウリング(キーン/ボー)
- マイクを口元10–15cmに近接。
- SP角度を聴衆側へ、演者から外す。
- 該当周波数のみ狭Qで-3〜-6dB。それでもダメなら音量-1〜-3dB。
7-2. 声が届かない/こもる
- SPを近接配置に変更(距離を詰める)。
- 2–4kHzを+1〜3dB、BGMを-3dB。
- 演者の発声角度をマイク正面へ。
7-3. ドロップ/ノイズ(ワイヤレス)
- チャンネル再選択(スキャン→再ロック)。
- 電池交換、アンテナ位置見直し(見通し/金属回避)。
8. ブース規模別プリセット(現場の“型”)
小間(幅3–6m):説明重視
- SP:8–10”×2、耳上1.6–1.8m、説明位置のやや前。
- マイク:ハンド1、HPF 100Hz、2–4kHz +2dB。
- ゲイン:CH -10dBFS目安、Limiter -1dB。
中小間(幅6–9m):集客+説明
- SP:10–12”×2、入口寄り内振り。客まで2–4m。
- ワイヤレス:ハンド1+ラベリア1(2ch)。
- Ducker:司会でBGM -9dB、Thresholdは通常発声で確実発動。
セミナー併設(半暗所)
- SP:12”×2、客席へ外振り。録画/配信はライン分岐。
- ワイヤレス:2〜4ch、Comp 2:1、Limiter -1dB、HPF 80–100Hz。
9. 配線・電源・安全
- 配線:XLRは養生、通路はケーブルプロテクタ必須。
- 電源:ドラム巻いたまま使用禁止、回路分け(音/映像)。
- 安全:スタンド転倒防止(重り/テーピング)、避難動線の確保。
10. 見積注記(コピペOK)
・館内dB規定(上限・時間帯)を遵守し、運用時に音量調整を行います。 ・ワイヤレス周波数は現地スキャンにより設定し、隣接ブースと調整します。 ・ハウリング対策としてマイク運用(口元10–15cm)とスピーカー角度最適化を実施します。 ・BGM/司会同時運用時はDuckerを設定し、司会音声の明瞭度を優先します。 ・配線は通路を避け、必要箇所はケーブルプロテクタで養生します。
11. 当日チェックリスト(抜け取り)
- SP:耳上/内振り/近接、転倒対策済み
- マイク:単一指向、口元10–15cm、衣擦れ無し
- ゲイン:上流→下流で正規化(CH -12〜-6dBFS)
- EQ:HPF 80–120Hz、2–4kHz微補正、狭Qのみでカット
- ワイヤレス:新品電池、被り無し、ロック済み
- dB:通路で平均/ピーク確認、規定内
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